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今泉にはやつと徳次の考へていることが判つたので、熱心に説明した。
練吉は永い間黙つていた。それから、いかにもいやいやな調子で、
と、呟き、房一に向つてしきりとうなづいていた。
「一昨年の水で流れちやつたからそのまゝになつてるね――ずつと下にはあるが、さあ、そこへ廻ると半路はんみち以上ちがふかな」
あの紙衣裳を着た神主達は今どこを歩いているのだらう。どこかの空地で、ばさばさ音をたてる袖口をたくし上げて、握飯をほゝばり、お茶を啜つてでもいるだらうか。きまりは、町の端々から通りといふ通りは、どんなところでも歩かねばならないのだ。昨日まで迂散うさん臭い顔で紙衣裳を眺め、触つてみようともしなかつた房一は、いよいよ着こむときになると案外な度胸を示した。ボール紙の冠をかぶり、紐を顎の下できゆつと結ぶと、肉づきのいゝ顔を一寸ひきしめて、どうだ!といふ風に盛子に擽つたさうな目をくれた。それはとにかく珍妙ないでたちにちがひなかつた。が、しかし、たとへ紙にもせよ、一定の式服といふものの持つ効果はたしかにあつた。それは本物のそれのやうではなかつたにしても、とにかく何かしら堂々としてはいた!そして速製の「威儀を正した」顔さへ自然と誘ひ出しさうであつた。
と、練吉が引つたくるやうにとつてしまつた。
練吉は時々、「うむ、うむ」と呟き、房一の方をふりかへつては「ね?」と、同意を求めるやうに云つていた。
と、道平は明かに盛子に気兼ねをしているらしかつた。
「今、あんたの便をしらべてみたがね」
と生返事をしながら、大工の口にした高間医院といふ名前が耳新しく響いたので、房一は思はず微笑した。
うまい工合だと感じた房一はすかさず云つた。
「まだつて、はじまつたばかりですよ」