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――もともと、練吉は房一から対診を頼まれたことさへ少からず意外だつた。これが若し、自分の場合だつたら、それは弱味を見せるといふことだつた。彼はまだ、房一に対診を頼むやうなことはつひぞ考へたことはなかつたし、これから先だつてそんなことを考へつきはしないだらうと云ふより、練吉には漠然と、房一を自分と同じ医者だと見る気にはいまだになれなかつたのである。
「いゝえ、なんの。おれんとこへなんか。――あんたは忙しい身だもの」
「いゝかね。あんたの身体はどこも悪くない」
「どうでした」
男は力なげに口をあけていた。
「うん、もうさつき帰つたよ」
と後を追ふと、徳次は
「獲とれましたか」
「あ、さう云へば」
遠くの方で誰かが呼んでいた。
貰った方でもそのままには済まされないから、返礼のしるしとして自分が携帯の菓子類を贈る。携帯品のない場合には、その土地の羊羹ようかんか煎餅せんべいのたぐいを買って贈る。それが初対面の時ばかりでなく、日を経ていよいよ懇意になるにしたがって、時々に鮓すしや果物などの遣やり取りをすることもある。
「どうして又今まで黙つていたのかね」